ある夏の思い出だった



『進一!』


あたしはアイツに駆け寄る



『未紗!おはよ』


アイツはニコッと笑う



『あ、進一クン!おはよ!』

あたしの横に居るのは親友、友田夏実。


親友なのに、あたしは夏実の好きな人を知らない。夏実もあたしの好きな人を知らないんだけど。


あたしの好きな人はアイツ。森下進一。

『あ、いきなりなんだけどさ、夏実の誕生日、いつ?』

『え、あたしぃ?8月5日だよお?だから夏実って言うの!』

『あ、そうなんだ。そっか、8月5日か!明後日だね』

『未紗もあたしにプレゼントちょうだいね!』

『いや、まだプレゼント決まってなくて…』

『早く決めてよおっ』


『みーさ!』


いきなり後ろから声をかけられる。

松本叶だ。

『おはよ、叶』

叶は暴力団の息子なんだ。少し怖いけど、馴れてくるとわあわあ盛り上がれる。


『おぉっす、叶!』

『おぉっす!』

進一と叶は仲良しだった


『叶!あたしのプレゼント、考えてくれた?』

『え?プレゼント?何、もうすぐお前の誕生日なの?』

『そうよ!明後日!もう、どいつもこいつも誕生日忘れるんだから』


そんなことを言い合いながら、教室に入る。



あたし達が入ってくると、教室は静まり返る。

一番浮いている叶がいるからだ。

『何、あんた達!文句あんなら本人に言いなさいよ!叶だってあんたらと同じ人間なんだからね!』

『いいよ、夏実。皆俺の事怖がってるんだよ。』


いつも我慢してる叶がたくましく思える。

我慢しなくていいのに。