そんな私の言葉を聞いたマリアが、困ったように眉尻を下げた。
「それは、私が目立たないように変装してるから……」
そう言ってトレードマークのメガネを外すと、何かを決心したかのようにぎゅっと目を瞑って黒髪おさげに手をかける。
「え、変装?」
何のこと?って思った次の瞬間、ずるりと不自然に動く黒にぎょっとした。
「……っ!?」
でも、更に驚いたのは、黒の次に現れた別の色で。
さらさらと遅れて零れ落ちてきたのは、艶やかなハニーブラウンの長い髪。
今時の日本でも同じような色に染めている子も多いから、珍しい色というわけではないけれど。
見るからに天然物のその色は、とてもとても綺麗だった。
そして、その色に釘付けになっていた私を見ることなく、目元へと指先を動かすマリア。
下を向いていたマリアが、ゆっくりと顔を上げる。
私の姿を捉えたその瞳の色は、まるで宝石のように透き通ったエメラルドグリーンだった…─────


