「ぜんぜん窮屈じゃないですよ。家以外ではいつも変装してるし、迷子になっちゃうから一人でなんて出掛けられないし……」
だから魁さんに言われたことを守っていても、普段と変わらない生活なんです。
そう伝えた私を、なんともいえない複雑な表情で見ていた魁さんは、頬に触れていた手を後頭部に回して引き寄せる。
「わっ!」
ぽすん、とその勢いのまま魁さんの胸へとダイブした私を腕の中に閉じ込めると
「───お前のことは、何があっても必ず守るから」
耳元で絞り出すように呟いて、力強く抱きしめた。
何かを堪えるような声は苦しげで。
「はい」
それに頷いて、私も広い背中に手を回す。
このときの私は魁さんの温もりに包まれて、まだそれほど危機感を感じていなかったのかもしれない。
忍び寄る本当の危険は、もうすぐそこまで迫ってきていたというのに…───