「魁さんのせいじゃ、ありません。ちょっと、考え事をしてて……」
私の顔色が悪いのは、暁さんのことを思い出していたからで魁さんのせいじゃない。
それに……
「ほんとに大丈夫ですよ?」
狙われているのは “マリア・ウィンザー” なのだから、元の姿に戻らなければいいだけの話で。
「極力一人では出歩かないし、元の姿にもなりません」
いまさらだけど、方向音痴の私が登下校以外で一人で出歩くことはない。
更に今は、自宅で優秀な執事様が目を光らせているから、一人で出歩くこと自体が不可能なのだ。
「……………………」
言われた言葉を繰り返して答えたのに、私をじっと見たまま動かない魁さん。
「……魁さん?」
黙り込んでしまった彼を伺うように声をかければ
「出来るだけ早く解決させるから。それまでは窮屈な生活が続くかもしれないが、我慢してくれ」
申し訳なさそうに眉尻を下げた。