アル君が握り拳をつくったのが見えて、急いで逃げようとしたけど一歩遅かった。
踵を返して後ろを向いた瞬間、アル君に首根っこを掴まれた俺は慌てふためく。
「俺の顔を、台布巾なんかで拭きやがって!」
怒りの声と共に振り下ろされたその拳が、ゴツンと俺の脳天を直撃した。
「い゛っ……痛ぁーいっ!!!」
「誰がいけないんだ、誰が」
叩かれて頭を押さえる俺と、もう一発お見舞いしようと動くアル君の手。
ぎゃあぎゃあ、と喚く俺とアル君の動きをぴたりと止めたのは
「───うるさい」
「───うるせぇ」
きれいに被った、二つの低~い声だった。
「「……………………」」
声の主へと、無言で顔を向ける俺とアル君。
その視線の先には─────
「マリアが起きるだろうが」
マリアちゃんを抱っこした、すこぶる機嫌の悪い魁君と……
眉間の皺を寄せて仁王立ちしている大魔王様がいた。


