私の返事に満足した綾ちゃんは


「じゃあ、ゆっくり話せる場所に移動しましょ」


私の腕をむんずと掴むと、スタスタと昇降口へ向かって歩き出す。


「え? ゆっくり話せる場所って……」


「着けば、分かるわよ」


「……………………」


そりゃ、そうでしょうけどね?

せめて、何処に行くのかくらいは教えてください。

帰宅時間が遅くなるのなら、家で私の帰りを待っている優秀な執事様に報告しなくてはならないのです……。

マーク兄さんの命令で、日本に残ったランスロットさん。

きっと、事細かに指示が出ているはず。

何の連絡もせずに寄り道なんてしたら……


間違いなく、明日から強制送迎になっちゃうよ!!


それだけは、なんとしてでも阻止したい。

何も教えてくれない綾ちゃんに腕を引かれて、モタモタとついていくしかない私。

軽やかな足取りで歩く綾ちゃんを見て、小さく息を吐く。

目的地に着いたら、直ぐにランスロットさんに電話をしよう。

そう決心して辿り着いたのは……


「お、お寺?」


閑静な住宅街の中に建つ、立派な門構えのお寺だった。


綾ちゃん? ゆっくり話せる場所って……

まさか、お寺ですか───?