「ランちゃんを日本に残して行くとか……、絶対に魁君とマリアちゃんを近づけないように画策してるよね」


ぼそりと、微かにしか聞こえないくらい小さく呟いたのに


「何か言ったか?」


地獄耳のマーク兄さんには、しっかりと聞こえていたらしく……


「いえ、何も」


青褪めた慧さんは、おとなしく口を噤んだ。

そんな二人の様子を見ていれば


「マリア。魁や日本が嫌になったら電話しろ。直ぐに迎えに来てやるから」


「……………………」


私を優しく抱きしめて、かなり酷いことを言ってくるマーク兄さん。


───私が魁さんを嫌になる日なんて、一生来ないよ!


そう言い返そうとしたけれど


「そんなことにはなりませんから、安心してイギリスで仕事をしていて下さい」


私が口を開く前に、隣にいた魁さんがマーク兄さんに話しかけた。


「先のことは、分からないだろう」


「分かりますよ」


そしてまた、私の頭上でにこにこと笑みを交し合う二人。


この笑顔が怖いと思うのは、私だけなのかな……?