「確かに遅いな」
「メイク直しに、時間がかかってるのかもよ?」
時間を確認して同意したアル君に、一応思っていたことを伝えれば「それはない」と否定される。
「何で? マリアちゃんだって、メイク直しくらいするでしょ?」
何でそこまで断言できるのかと首を傾げれば
「マリアは自分でメイクしたことはないし、そもそもメイク用品なんて持っていないぞ」
驚きの答えが返ってきた。
「え? マリアちゃん、メイク用品持ってないの?」
嘘だろ!? って思ったけど……
「あぁ。普段はノーメイクだし、必要な時にはスタイリストがメイクしてるんだから必要ないだろ」
「…………ソウデスネ」
アル君の言葉で、イギリスでの彼女の生活環境を思い出す。
素朴な印象が強いマリアちゃんだから、忘れがちだけど……
彼女は、うちなんかが足元にも及ばないほどの財力を持つウィンザー家の令嬢だった。
確かに自分でメイクする必要がないんだから、メイク用品を持っていなくても納得だ。
でも……
「じゃあ、何で……」
こんなに遅いんだろう? と、続けようとした言葉は、魁君の動きによって遮られる。


