「私はてっきり、魁のことが怖くなって泣いてしまったのかと思ったわ」
魁のことが怖いって……何で?
それこそ、今聞いた話の中に怖がる要素なんて欠片もなかったよね?
意味が分からなくて首を傾げれば
「だって、12歳の子供が言った事よ? それも、その日に出会ったばかりの。普通に考えたら魁と会わない間にマリアちゃんに好きな人が出来るかもしれないし、そもそもそんな口約束なんて本気にしないし、忘れてしまう可能性の方が高いじゃない」
そこまで言うと、私から魁に視線を向けたお母様は
「それなのにこの子ったら、マリアちゃんが知らない間に外堀をガチガチに固めちゃって。条件付きだったけど、お兄様から婚約の承諾も得てしまうし……これでマリアちゃんに結婚したくないなんて言われたら、どうするつもりだったのかしら。ほんと、我が息子ながら恐ろしいわ」
はぁー、と深い溜め息を吐いた。
「……………………」
そっか。
普通に考えたら、あの口約束は本気にしないものなのか……
すみません。
出会ったばかりの魁からのプロポーズを、ずっと信じて心の支えにしていました。
確かに、迎えに来てくれるか半信半疑の時もあったけれど。
「今更だけど、マリアちゃんは本当に魁でいいの?」
お母様の問い掛けに、皆の視線が私に向けられる。


