「何かされたのか」
「…え?」
一瞬、何を言われたのか分からなくて聞き返してしまったけれど。
「な、何もされていません! 魁の話を聞いて、私が勝手に泣いちゃっただけです!」
魁の眼力が鋭さを増して、お母様達の方に向けられたのに気づいて慌てて口を開く。
「は? 俺の話?」
視線を私に戻した魁にコクコクと頷くと
「……ちょっと待て。何で俺の話を聞いてお前が泣くんだ」
「え?」
「泣ける要素なんてどこにもないだろ」
心底分からないというように顔を顰める。
「どこにもと言われても……」
聞いた話全部に泣ける要素満載でしたが。
「全部ですけど」
きっぱりとそう言い切れば
「全部って……一体何の話を聞いたんだ」
怪訝な顔をするから。
皆の前で泣いた理由を話すのは、めちゃくちゃ恥ずかしいけれど。
今の体勢のままでいるのは、もっと恥ずかしいし。
魁に納得してもらわないと、この状況からは抜け出せそうにないのだから仕方がない。
……よし!
意を決して、一から説明しようとしたら
「やだ、マリアちゃん。そんな事で泣いてたの?」
ずっと様子を窺っていたお母様が、先に口を開いた。


