視界の先に見えたのは、横に視線を向けながら後ろに飛び退く慧さんの姿。
「…………?」
一体何に驚いているのかと、慧さんが見ている方向に頭を動かせば
「慧、てめぇ…ちょろちょろと逃げ回るんじゃねぇ」
恐ろしい眼力で慧さんを睨みつける魁がいた。
……ん? 魁が何でここに?
「だって、逃げなかったら俺痛い事されるじゃん!」
「───痛い事されるような事をした自覚はあるのか」
「ない事もないけど、痛いのは嫌だー!」
そう叫んで、私の後ろに回り込んだ慧さんは「暴力反対!」と訴える。
慧さん、何で私を盾にするんですかっ!
2人の間に挟まれる形になった私には、当たり前だけど慧さんを睨みつける魁の視線が向けられるわけで。
ひぃっ! やっぱり怖いわっ!!
「……………………」
びくりと肩を揺らす私の存在に初めて気づいたのか、一瞬目を見開いた魁が直ぐに眉間に皺を寄せた。
何でそんな顔するんだろ? と思ったけれど。
さっき慧さんに思いっきり顔を拭かれたことを思い出して、慌てて両手で顔を隠す。
絶対、お化粧がボロボロに落ちてスゴイ顔になってるんだ!
「マリア」
魁が私の名前を呼ぶけれど、そんな酷い顔を見せられるわけもなく。
「今、私の顔酷いことになってるから見ないで」
ふるふると顔を振っで、そう訴えたのに。
私の両手首をそっと掴んだと思ったら、一気に引き剥がされた。
ぎゃーっ!!


