箱根の旅館に滞在していた時も、会いに来てくれた魁。
私を探し出すのに苦労したと言っていたけれど。
改めて魁を見てきた第三者から今までの話を聞くと、それが私の想像以上に大変だったのだとわかる。
「あらあら、どうしちゃったのかしら」
いきなり泣き始めた私を見て、あたふたする愛ちゃんとお母様。
「す、すみませんっ」
止めようと思っても、一度流れ始めた涙は感情が昂っているせいか、なかなか止まらない。
「大丈夫?」と、優しく摩ってくれるお母様の手の温かさを背中に感じながら、何とか落ち着こうと深呼吸をしていたら
「えっ! マリアちゃん、何で泣いてるの!?」
ここに居るはずのない人物の、慌てたような声が部屋に響いた。
反射的に顔を上げれば
え? 慧さん?
そこには、顔面蒼白になって駆け寄ってくる慧さんの姿が見えて。
その勢いにびっくりして涙が止まった。
もしかして、私を迎えに戻って来てくれたのかと思ったのだけれど
「ヤバい、ヤバい。どうしよう……」
何だか様子が変だ。
「あら、慧。よく戻って来れたわねぇ」
お母様が、慧さんに声を掛けたのに
「と、取り敢えず、早急に! 今すぐ泣き止んで! 早くっ!!」
それを無視して、ポケットから取り出したハンカチで私の顔を押さえてくる。
「ぶっ」
ぎゃー、やめて下さいっ!
そんなに強く拭いたら、ランスロットさんにしてもらったメイクが崩れちゃいますっ!!
それに、もう涙止まってますから!
「ちょっと、慧! 何してるの!」
お母様の非難の声も届いていないのか、更にグイグイとハンカチで拭こうとする慧さんに
「け、慧さん」
もう大丈夫です!と言おうとしたら、「ひぃっ」と変な声が聞こえてきて。
ん? 何の声?
次の瞬間、押さえられていたハンカチがひらりと落ちていく。


