Wonderful DaysⅢ【野いちごバージョン】



箱根の旅館に滞在していた時も、会いに来てくれた魁。

私を探し出すのに苦労したと言っていたけれど。

改めて魁を見てきた第三者から今までの話を聞くと、それが私の想像以上に大変だったのだとわかる。


「あらあら、どうしちゃったのかしら」


いきなり泣き始めた私を見て、あたふたする愛ちゃんとお母様。


「す、すみませんっ」


止めようと思っても、一度流れ始めた涙は感情が昂っているせいか、なかなか止まらない。

「大丈夫?」と、優しく摩ってくれるお母様の手の温かさを背中に感じながら、何とか落ち着こうと深呼吸をしていたら


「えっ! マリアちゃん、何で泣いてるの!?」


ここに居るはずのない人物の、慌てたような声が部屋に響いた。

反射的に顔を上げれば

え? 慧さん?

そこには、顔面蒼白になって駆け寄ってくる慧さんの姿が見えて。

その勢いにびっくりして涙が止まった。

もしかして、私を迎えに戻って来てくれたのかと思ったのだけれど


「ヤバい、ヤバい。どうしよう……」


何だか様子が変だ。


「あら、慧。よく戻って来れたわねぇ」


お母様が、慧さんに声を掛けたのに


「と、取り敢えず、早急に! 今すぐ泣き止んで! 早くっ!!」


それを無視して、ポケットから取り出したハンカチで私の顔を押さえてくる。


「ぶっ」


ぎゃー、やめて下さいっ!

そんなに強く拭いたら、ランスロットさんにしてもらったメイクが崩れちゃいますっ!!

それに、もう涙止まってますから!


「ちょっと、慧! 何してるの!」


お母様の非難の声も届いていないのか、更にグイグイとハンカチで拭こうとする慧さんに


「け、慧さん」


もう大丈夫です!と言おうとしたら、「ひぃっ」と変な声が聞こえてきて。

ん? 何の声?

次の瞬間、押さえられていたハンカチがひらりと落ちていく。