「えぇ、そうよ。婚約するには二人共あまりにも若過ぎたから。お兄様もそれを心配して、あえて仮の婚約という形にしたんだと思うわ」
仮の婚約を決めたのは、お母様達じゃなくてマーク兄さんだったの!?
「未来の義理の弟になるかもしれない魁に求める事は多かったけれど、今のあの子を見ているとそれが正しかったと思っているわ。そうでなければ、高校卒業して直ぐに結婚だなんて頼りなくて私でも反対だったかもしれないもの」
ふぅ、と息を吐いて私を見つめるお母様は
「こっちが心配するくらい必死になっていたから、あの魁をこんなに夢中にさせるマリアちゃんってどんな子なんだろうって、ずっと会いたかったのよ。なのにあの子ったら、一向に会わせてくれないんですもの」
私以外の家族は皆会ったことがあるのに。
そう言って、わなわなと箸を持つ手を震わせる。
ご家族の中で、唯一会ったことがなかったお母様。
タイミングが悪かったとはいえ、やっぱり一番最初にご挨拶しなきゃいけない人だったのに!
「ご挨拶が遅くなってしまって、本当にすみません」
「あら、貴方のせいじゃないわ。それに、これからは堂々と会えるんですもの」
慌てて謝ったら、眉間に寄せていた皺を消してにっこりと微笑む。
「たくさんお話ししましょうね」
「はい!」
和やかな雰囲気に戻った所で、温かいほうじ茶を飲んでホッと息を吐く。
お母様の作ったお料理は、どれもとても美味しくて。
私もいつか魁にこんな料理を振る舞えるようになりたいな、なんて思いながら食べていたら……
入口の方から、バタバタと複数の足音が聞こえてきた。


