「あの子ったら、何度言っても会わせてくれないんだもの」
ぎゅうぎゅうと抱き締められ、全く動けない私を無視してテンションが上がる一方のお母様。
「でも、これでやっと邪魔されずに会うことが出来るわ!」
喜んでくださるのはものすごく嬉しいのですが、益々力が込められてきて上手く空気が吸えない。
く、苦しい……
「あ、あのっ!」
意を決して声を掛けると
「あら、ごめんなさい。私ったら、嬉しくてつい……」
我に返ったお母様が、「おほほ」と笑いながらやっと解放してくれる。
お母様にバレないように、大きく息を吸い込んでいれば
「慧のせいで少し予定が狂ってしまったけど、向こうに昼食を用意してあるの。食べながらゆっくり話をしましょう」
「は、はい」
奥の部屋にある窓際のテーブル席に案内された。
そこには所狭しと美味しそうなお料理が並べられていて。
「わぁ、美味しそう…」
胃袋を刺激する良い匂いが部屋の中に広がっていた。
「今日は味見をしてもらって、実習は来週からよ」
「はい、よろしくお願いします!」
それから始まったランチタイムは怒涛の質問攻めで。
「聞きたい事はたくさんあるけど、これだけはどうしても聞きたかったの」
「何でしょうか」
何を聞かれるのかと背筋を伸ばして構えていたのに
「あの子といて楽しい?」
「はい?」
真剣な顔で口を開いたお母様の最初の質問がそれだった。


