「まったく。逃げ足だけは早いんだから」
そう言って、慧さんが出て行ってしまった方を見ていたお母様がゆっくりと振り返り……
私の姿を捉えると、上から下まで視線を動かして真っ直ぐに見据えてくる。
この人が、魁のお母様。
……に、似てる!!
切れ長の二重に唇の形、雰囲気まで。
魁とよく似ているその顔に釘付けになっていれば
「……で、あなたがマリア・ウィンザーさんね?」
私の名前を確認するお母様。
その鋭い眼光に、身体がぴきりと硬直する。
慧さんのまさかの逃走に呆然としていた私は、まだ自分の名前すら名乗っていない事に気がついて
「あ…の、マリア・周防・ウィンザーです。ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ございませんっ!」
「……………………」
慌てて頭を下げたけれど、目の前のお母様からの反応はない。
……もしかして、怒ってる!?
以前、インフルエンザでお世話になった時も、お母様は不在で挨拶も出来なかったし。
それこそ、時間が余りまくっている私の方から改めてお礼のご挨拶にお伺いしなきゃいけなかったのに。
あぁ、第一印象最悪だ……
自分の失態に頭を抱えたくなっていた私の耳に
「……っと」
「え?」
お母様の声が聞こえた気がして、そっと顔を上げれば
「やっと、貴方に会えたわ!」
「ぐぇっ!!」
満面の笑みで、思い切り抱きしめられた。


