Wonderful DaysⅢ【野いちごバージョン】



「え? やっとって、約束は12時頃だったよね…?」


慧さんが顔を引き攣らせながら確認すれば


「……12時頃?」


お母様の片眉が、ぴくりと動く。


「いつから約束の時間が12時頃に変更になったのかしら? 私があなたと約束したのは、11時だったはずですが」


「え? 11時!?」


「あなたが11時と言うから時間を合わせたのだけど?」


その指摘にハッとした慧さんは


「あれ? 俺、11時に(マリアちゃんを迎えに行ってから)行くって……」


ピタリと動きを止めて何かをボソボソと呟くと、みるみるうちに顔面蒼白になっていく。


「慧?」


お母様に声を掛けられて、ぎこちなく目を逸らした慧さんは


「えーっと、あの、その……ご、ごめんなさいぃぃー!!」


脱兎の如く逃げ出した。


「え? ちょっ、慧さん!?」


私が声を掛けた時には、既に姿は消えていて。

パタンと、ドアの閉まる音が部屋に響く。

あっという間に部屋を出て行ってしまった慧さんだけど。

……戻ってきてくれるよね?

私、ここから一人で帰れないし、まだ自己紹介もしていないのですが!!

この状況をどうしろと!?


「……逃げたわね」


呆然としている私の後ろから、怒気を含んだ声が聞こえてきた。