固まっている私に気づかない慧さんは、ICカードを翳して解錠するとかちゃりとドアを開ける。
「さ、入って」
「……ありがとうございます」
ドアを開けたまま待っていてくれる慧さんにお礼を言って、生まれたての小鹿のようにプルプルと震える足を叱咤して中に入った。
直ぐに部屋だと思っていたのに、先に見えたのは細い通路で。
「この奥だよ」
そう言って私の横を通り過ぎて行く慧さんは、右に曲がった所で見えた人影に向かって声を掛ける。
「あ、母さん。マリアちゃん連れてきたよ~」
「母さん」と言う言葉に、緊張のピークに達した私の心臓は
「慧」
続いて聞こえてきた声に、今にも飛び出しそうなほどに跳ね上がった。
この先にいる女性が魁のお母様。
ドキドキする胸を押さえながら慧さんの後ろからそっと覗いて見えたその人は、薄紫色の着物を着て窓際のソファーに座っていたのだけれど
「やっと来たのね」
不機嫌そうに溜め息を吐いて、ゆっくりと立ち上がる。


