「……っ」
久しぶりに目の前で見た眼力の鋭さに、ひゅっと息を呑む。
こ、怖い……
それが私自身ではなく、私を刺した相手に向けたものだとわかっていても体は正直で。
カタカタと震え始めた私に気が付いた魁さんは
「あ、悪い。別にお前を怖がらせようとしたわけじゃ……」
慌てて殺気を消して、宥めるようにおでこにそっと唇を落とす。
「……嫌なことを思い出させて悪かった」
もう一度謝罪の言葉を口にして、ゆっくりと離れていく。
「……………………」
どうやら、私が刺された時の状況を思い出して震えだしたと思ったようだけど。
あなたの殺気が恐ろしかったんです!!
「お前を刺した奴は今どこにいるんだ」
そんな魁さんは、今度は私が答えやすいような質問に変えて尋ねてくる。
「あ、えと、たぶん刑務所、かな……?」
「たぶんってなんだ、たぶんて」
「私、直後に病院に運ばれたので、よくわからないんです。兄さん達に何度聞いても、二度とこっちの世界に戻ってこれない所だとしか教えてくれなくて……」
「……………………」
兄さん達の言う “ こっちの世界 ” ではない所が、果たして刑務所なのかもわからないのだけれど。
にっこり笑顔であの言葉を繰り返すマーク兄さんに恐怖を覚えて、それ以上突っ込んで聞くことはできなかった。
「そうか……」
そう言って、小さく息を吐いた魁さんは
「───子供ができにくい理由は、これか」
ゆっくりと傷痕を撫でた。


