まるでガラス細工でも扱うかのように、そっと触れてくる魁さんの手。

引き攣るそこはとっくに痛みはないけれど、触れられているところは痺れにも似たじんじんとする感覚が動く指先を追いかけていく。

あれほど見るのが怖かった魁さんの表情は……

無表情だった。

兄さん達のように、憐みの視線ではなかったけれど


「……………………」


傷を見た魁さんが、どう思っているのか全く分からない。

だから私も動くことができなくて。

どう声を掛ければいいのかと思案していれば


「───マリア」


不意に名前を呼ばれて、鼓動が跳ねあがった。


「……は、い」


緊張で声が震えてしまう。

嫌な心臓の音を聞きながら後に続く言葉を待っていれば


「この傷は……誰にやられた?」


「……え?」


思っていたものとは違っていたことに、頭が追い付いていかない。


「誰にやられた? 最近のものじゃないだろ」


「これは、イギリスにいた時のもので……」


だから……


誰に(・・)?」


「あ、の……日本人学校の元クラスメイトに」


つい、ぽろりと素直に答えてしまった。

それを聞いた魁さんは


「お前、イギリスで何があった? 普通じゃないだろ、刺されるなんて」


さっきまでの無表情が嘘のように、恐ろしいほどの殺気を放つ。