イギリス。
あそこでの生活は思い出したくない。
いい思い出なんて、一つもなかったから。
暗く沈んでいく思考と共に、段々と視線も下がっていく。
……頼るって、どうすればいいの?
イギリスで、頼れる人なんていなかった。
寄宿舎生活だった兄さんたちは、ほとんどお屋敷にはいなくて。
お屋敷に残っていたのは、お婆様と近寄りがたかったランスロットさんにメイドの人たちだけ。
長期休暇で帰ってきても、お婆様を信頼している兄たちに頼ろうとすることすら諦めていた。
「俺が言ってるのは、困った時に自分で何とかしようとする前に誰かに相談しろってことだよ」
そんな私の顎を人差し指で持ち上げて、再び視線を合わせた魁さんは
「マークさんやアルバートさんに遠慮して頼れないなら、それでもいい」
私の心を見透かすように
「もしこの先、困ったことがあったら真っ先に俺に言え」
「……っ」
ダークブラウンの双眸で真っ直ぐに射抜いてくる。


