のろのろと立ち上がって、ドキドキとうるさく鳴る胸を押さえながらリビングの奥にある部屋に向かう。
───本当に、あの部屋なの?
確信した今でも、信じられなくて。
もしも本当にあの場所ならば、この先にあるのは……
大きな障子の前で足を止め、きゅっと固く目を閉じる。
自分を落ち着かせるように、一度深呼吸をして。
それでも緊張で震える指先に力を入れて、障子を横に引けば
「……っ……」
目に飛び込んできたのは、真っ白な世界の中に浮かび上がる、ライトアップされた一本の大きな木。
雪が積もっているはずのそこだけが、別世界のように。
あの日とは違う、咲き誇る桜の花を見た途端、胸の奥から熱いものが込み上げてきて。
瞬きもせずに見上げていた視界は、みるみる歪んでぼやけていく。
───本当に、あの部屋なんだ……
卒業した日に迎えに来てくれると言ってくれた約束は、私の留学というフライングでかなり早くなってしまったけれど。
あの日、ゆう君と再会した思い出の場所は。
枝に見事な満開の花を咲かせて、目の前に広がっていた。


