「イギリスの、貴族……?」
という事は、この部屋にマーク兄さんも泊まったことがあるのだろうか。
なんて思っていたのだけれど。
「この部屋に見覚えは?」
「……え?」
魁さんから問いかけられて、私?と首を傾げてしまう。
だって、日本に来てから外泊したのは、インフルエンザに罹った時に泊まった魁さんの家だけで。
初めて泊まる旅館に見覚えなんてあるわけが……
「あ、れ……?」
何だろう?
ある一角を視界に捉えた時、不意に懐かしさを覚えて。
……私、この部屋を知っている?
もう一度、ゆっくりと見渡してみれば。
この部屋の所々には、なんとなく見覚えがあった。
「……………………」
私の正面に見える、丸い小窓も。
隣のリビングにある、本物の暖炉も。
そして。
今は障子で閉じられているけれど、あの奥にはきっと大きな窓が一面に広がっているはずだ。
そう確信して、胸が震えた。
……何で、今まで気が付かなかったんだろう。
この部屋を、ずっと前から知っていたのに。


