そうして辿り着いた部屋には、魁さんの言っていた通り美味しそうな料理が運ばれていて。
「ごちそうさまでした!」
絶品料理の数々に大満足してお礼を言えば
「……それでは、おやすみなさいませ」
テーブルの上をきれいに片づけた女将は、にこりと笑って簡単な部屋の説明を終えると、お辞儀をして白い襖の奥に消えていった。
シン、と静まり返った部屋で、改めて部屋を見渡してみる。
ここが空いていなければ、今頃はあのホテルのロビーで毛布にくるまって寒さを凌いでいただろうと思うと、ラッキーだったなと思う反面一つの疑問が湧いてきた。
「よく、こんなすごい部屋が空いていましたね」
春休み真っただ中の、観光シーズン。
昼間デートをしていて感じたのは、観光客の多さだった。
もちろん日帰りで来ていた人たちもいただろうけれど、その中で泊まる人の数だって相当なはずなのに。
あのホテルのように、満室にならなかったのが不思議なくらい洗練された旅館に泊まれたのは奇跡じゃないだろうか。
そう思っていたのだけれど。
「この部屋だけは、滅多に予約を取らないからな」
返ってきたのは、頭に疑問符が浮かぶ答えだった。


