「うぅ、これも美味しいぃぃぃ……」
目の前に出された懐石料理に舌鼓を打つ。
先付けのフグの白子豆腐に始まって、春を意識した可愛く盛り付けられた前菜。
季節のお造りに、焼き物の鰆の西京味噌焼き。
その後も、煮物、天ぷら、ご飯に赤だしの味噌汁と。
次々と並べられていく繊細に盛り付けられた料理は、どれもこれも美しく、味も最高に美味しかった。
「ご満足頂けましたでしょうか?」
「す……っっごく、満足しました!!」
食後の水菓子と甘味と共に、お煎茶を置いた女将に問いかけられて。
「それはようございました」
被せ気味に答えた私に、ホッとしたように微笑んだ。
あの後、てっきり階段を上がって部屋に行くものだと思っていたのに。
魁さんの足は、そのまま真っ直ぐ進んで建物の一番奥にあった扉の前で止まった。
この奥が今日泊まる部屋なのかな?なんて思っていたら。
ギギィ、と。
部屋の扉にしては、やけに重そうな音が辺りに響いて。
視界に広がる真っ白な世界を認識する前に、目の前が真っ暗になった。
……なぜ?