◇


ちゃぷん、と水面が揺れて。


「あったかい……」


小さく吐いた呟きが、広い浴室に木霊する。

冷えきった身体が、体温を取り戻すように。

じんわりと浸透していく熱を感じながら、そっと目を閉じた。




あれから、ホテルを出た私たち。

吹雪の中10分ほど歩いて辿り着いたのは、山の中にひっそりと佇む旅館だった。

そのたった10分の距離だったのに。

降り続く雪のせいで、身体は芯から冷えて。

厚手のコートを着ていたのに、旅館に着いた時にはガタガタと震えが止まらなくなっていた私。

それに気づいた魁さんは


「お前は先に風呂」


「え、でも……」


「でもじゃない。身体が冷え切ってるんだから、ゆっくり温泉に浸かって来い」


「……わっ!」


旅館の人が部屋に案内してくれる前に、私を大きな温泉にポイっと放り込んだ。