そして、その間何もすることがない私は


「お客様、お待たせ致しました」


電話を切ったホテルスタッフが、女性たちに声を掛けていたのを聞いていた。


「それで、他のホテルは?」


「大変申し上げにくいのですが、近辺のホテルも旅館もお客様でいっぱいでお部屋をお取りできないと連絡がございまして……」


「うそでしょう!?」


「じゃあ、私たちどうなるの?」


やっぱり急に降った雪のせいで、どこのホテルも空いていなかったようで。


「緊急事態ですので、当ホテルのロビーを開放することに致しました。ゆっくり休むことはできないと思いますが、毛布やお食事はご用意できますので……」


「じゃあ、外に追い出されることはないんですね!?」


「はい、もちろんです」


「よかったー!!」


どうやらここにいるお客さんは、私たちを含めて皆ロビーに泊まることになりそうだ。

そう思っていたのに。


「───待たせて悪い」


電話を終えた魁さんは


「行くぞ」


「え? 行くってどこに……」


「今日、泊まるところ」


そう言って、私の手を取った。