あんなに「食べたい!」と騒いでいた本人が忘れていたのに、魁さんは覚えていてくれたんだ。
「……………………」
嬉しいな。
魁さんの優しさに胸がぽかぽかと温かくなるのを感じながら、私もアップルパイを口に運ぶ。
……んん~っ!
「美味しいっ!」
サクサクのパイとリンゴの爽やかさに、バニラの甘味が加わって。
更にフルーツソースをつけて食べると、また味が変わる。
ひと口食べる度に変わる絶妙なハーモニーのアップルパイは最高に美味しかった。
「もっと食ってもいいぞ」
あっという間に完食してしまった私を見て、メニューを差し出してくる魁さん。
「え、もう充分です」
「もっと食いたいって顔してる」
にやりと悪戯っぽく笑って、「次はこのケーキ食えば?」なんて言いながら美味しそうなイチゴのケーキを指差す。
なんて美味しそうなケーキなの……
一瞬、悪魔の誘惑に負けそうになったけれど
「う……もうちょっと食べたいなって思いますけど、クリブデンの二の舞になるのは嫌なので……」
「あー、確かにな」
苦い過去を思い出して、思わずテーブルの下で下腹を押さえてしまう。
魁さんもあのアフタヌーンティーを思い出したのか、苦笑いでメニューを引っ込めた。
───彼氏とのデートなのに、下腹ぽっこりなんて絶対ダメっ!


