「魁さんは、いつも私のこと考えてくれてるよ」


本当の彼のことを知ってほしくて、言葉にすれば


「まぁ、マリアはアイツの婚約者だしね。他の女に対する態度と違うのはわかっているんだけど、どうしても今までのイメージが抜けないのよねぇ……」


見事なまでに乙女心を無視したあの態度を、マリアに一度見せてあげたいわ……と、困ったように苦笑いする綾ちゃん。

確かに。
中学の頃から、女の影が一切なかったと言っていたし。

日本に来て再会した頃の魁さんを思い返してみても、気安く話しかけられる雰囲気ではなかった。

だから、女性と二人で何処かに出掛けるというイメージが浮かばないのかもしれないけれど。


「……で、何処に行くの?」


食べながら話を続ける彼女を見て、私も目の前のオムライスをスプーンで掬って一口。

ふわふわトロトロの卵が美味しい!


「え? えっと、行き先はまだ聞いてないの。春休みに出掛けようとしか……」


オムライスの味に感動して、返事が遅れた私の言葉を聞いた綾ちゃんは


「何も聞いてないの?」


「靴擦れするから、ヒールの高い靴はやめとけって言われた」


「……あの男、あんたをどこに連れて行こうとしているのよ」


「さ、さぁ……?」


「まさか、まともなデートプランも立てられないんじゃないでしょうね……」


顔を顰めて、何かをブツブツと呟いていた。