元々二人の婚約は、魁からの一方的なものだと思っていた。
実際、最初はそうだったのだが……
アイツの努力の賜物なのか、いつの間にかマリアの中で魁は一番の存在になっていたらしい。
「良かったね、マリア」
「はい」
優しく笑みを浮かべる修に頷いて、礼を言うマリアに
「ありがとう、マーク兄さん」
「……今後、同じ学院の生徒だろうが、安易に付いて行ったら駄目だぞ」
「……………………」
「返事は?」
「……はい」
まるで幼稚園児にでも言い聞かせるように、真剣に諭す兄さん。
普段の兄とはまるで違うその様子に、思わず笑ってしまった。
こうして、マリアを残したまま国に帰ることになった俺達なのだが……
やっぱりこの時、無理にでも連れて帰ればよかったと後悔するのはもう少し先の話。