その様子を見て
───あ、ダメだ……と思った。
一度こうと決めたら、人の意見を聞かない兄なのに。
沈黙を続けるのは、修の考えに納得しているということだ。
「マリアは、今後も俺が預かるよ」
その兄さんに
「修……」
「心の許せる友達もできて、やっと日本で高校生らしい生活を送れているんだ。その幸せを壊す資格は、誰にも無いよ。結城君や友達の話をするマリアがどんなに嬉しそうにしているか、君達兄弟だって十分すぎるくらい知っているだろう?」
「それは、知っている」
「だったら、今マリアを連れて帰るべきじゃないって事は、わかっているよね?」
優しく諭すように言う修。
「……………………」
「可愛い妹を守りたいって気持ちは、よくわかるよ。君が本気になれば、それこそ誰の目にも触れさせずに、一生穏やかな日々を送らせてあげることだってできるだろうけど」
彼の言っていることは正しい。
この兄ならば、それが可能だから。
「でもマリアは、それで本当に幸せなのかな?」
それは、兄さんだけに向けた言葉ではなかったようで。
マリアに問うように、首を傾げる修。
自然と、兄さんと俺もマリアに視線を向ける。


