「何で、洋服持ってきてくれなかったの?」
もう一度、同じ質問をぶつけてみれば
「何でって、魁に聞かなかったのかい?」
「聞いたけど……私は、持ってきた服で十分だよ。デザインだって去年のだとか気にしたことないもん。わざわざ全部買い換えなくたって、着た事がない服もあったんだし……」
「デザインもそうだが、マリアだって背が伸びただろう? 体に合った服を選ばないとおかしいからね」
マーク兄さんからは、服を買い換えるのは当たり前のような返事が返ってきた。
「……………………」
背が伸びた? それって、去年からの事を言ってるんだよね?
「マーク兄さん。私、身長は去年から1cmしか伸びてないよ!」
そう。背が伸びだと言っても、たったの1cm。
たかが1cm背が伸びたっていうだけで、持っている洋服を総入れ替えする人が一体どこにいるというのだろうか。
「1cmでも、十分大きくなっているじゃないか」
私の言葉にも、笑顔で返してくるマーク兄さんに
「……………………」
───駄目だこりゃ……
糠に釘。
豆腐に鎹。
暖簾に腕押し。
何を言っても無駄だった。