「……何を、とは?」
視線だけを向けた兄に
「ケガ人を興奮させて、何をしているのかって聞いてるの。東雲先生に、安静にしているようにって言われたの忘れてないよね?」
確認するように問う修。
「あぁ、忘れてない」
「だったら、どうしてマリアを興奮させるような事を言うんだい?」
「……聞いてたのか」
「あれだけ大声出してたら、嫌でも聞こえるよ。下の階まで、二人の声が響いていたからね」
口調は優しいが、その目は兄さんの行動を責めていた。
「マリアを心配する気持ちは分かるけど、イギリスに連れて帰ってどうするんだい? さっきマリアも言ってたけど、マークもアルもほとんど屋敷に居ないでしょ」
確かに。
マリアや修の言うように、兄さんは仕事が忙しく、世界中を飛び回っていて屋敷に帰ってこれないことも多い。
かく言う俺も、大学に通いながら忙しい兄の仕事を手伝うことも多々あり、帰りたくても帰れない日々が続いていた。


