「だから、これがお前の服」
私の質問に答えてくれた魁さんだったけど
「え?」
一瞬、何を言われたのか理解できなくて聞き返してしまった。
「いえ、そうじゃなくて……私が持ってきた服は……」
「ジェットから、降ろしてない」
「…………はい?」
降ろしてないって……何で?
呆然とする私に告げられたのは
「降ろさなくていいって言われたんだよ。お前の服は去年のデザインだから、直ぐに買い換えるからって」
「……………………」
それって、誰が? なんて聞かなくても分かりきってるけど……
「マークさんが」
「……………そうですか」
魁さんの口から告げられた、予想通りのその名前にがっくりと項垂れた。
「だから、これしかねぇの」
「分かりました……ありがとうございます」
もう一度差し出された紙袋を受け取って、お礼を言うと
「廊下で待ってる」
「はい」
ドアの向こう側に姿を消した魁さん。
「急がなきゃ……」
魁さんを待たせるわけにはいかないから、慌てて支度を済ませる私だった。