「あんた、そんなことも知らないで此処に来たのかよ」
蓮が冷ややかな視線を向ければ
「いきなり現場に向かえって言われたのが、さっきなんだよ!」
責任者は俺じゃねぇし。
そう言いながら、近くにいた部下を手招きして呼び寄せる。
拘束していた手足の結束バンドを、警官に手渡されたハサミで切ると
「おい、こいつも連れて行け。こいつは、本部な」
「はい!」
責任者じゃないと言いながらも、結束バンドの代わりに手錠をかけて指示を出した赤羽は
「ったく、小娘が。厄介な事件を起こしやがって」
二人の警官に両腕を掴まれて立ち上がった暁に向かって文句を言う。
「……っく、そっ……」
この期に及んで暴れようとした女だったが
「何だ、まだ暴れるのか?」
片眉を吊り上げた赤羽に凄まれると
「……っ……」
諦めたのか、体から力を抜くと、引き摺られるように歩き始めた。


