「吐き出してるから一錠丸ごとは飲んでねぇけど、溶けた成分がどれだけ体に吸収されてるかわからない」
そして、一番の気がかりな事を伝えるために言葉を続ける。
「ただ、食い物のアナフィラキシーと違って、薬は体内への吸収が早い。急がないとヤバイぞ、魁」
『あぁ、わかってる』
苦しげに呟いた声が聞こえた後、通話はぷつりと切れた。
魁の名前を呼んだ時、呼吸が苦しそうだったマリアちゃん。
呼吸困難と意識障害。
アナフィラキシーの中でも特に激烈なその反応は、治療が遅れれば命に係わる。
救命できるかは、ショック症状が出てから30分以内にアドレナリンが投与できるかどうかで決まると、前に弟が軽いアナフィラキシー症状で運ばれた病院の医師から聞いたことがあった。
「……くそっ!」
待ち受け画面に切り替わったスマホを握り締めて、間に合ってくれ!と願うことしかできない。
マリアちゃんをそんな目に合わせた女を再起不能になるまで殴ってやりたいという衝動を必死に抑えながら、サツがやって来るのを今か今かと待っていた。


