「………………え?」


あ、あの話?

あの話って、一体どの話のこと!?


彼女との過去の会話をすぐに思い出せない私は、内心で大汗をかきながら呆けた顔で見返すことしかできない。


せめて、会話にヒントを入れてくれないだろうか。


そんな鈍い反応の私に舌打ちした暁さんは


「結城さんと、早く別れろって話だよっ!」


ソファーの横にあったサイドテーブルからガラスの灰皿を手にすると、苛立たしげに床に叩きつける。

ドゴン、と鈍い音を立てて赤い絨毯に転がる灰皿。


その行動に驚いて、びくりと肩が揺れたのと、部屋の扉をがノックされたのはほぼ同時だった。