部屋の中に入って、まず目に飛び込んできたのは片面ガラス張りの大きな壁。
近づくと下のフロアが一望できるような造りで、カラフルなライトが入り口付近からでも反射して見える。
「そこに座って」
思わず足を止めてしまった私を、いかにも高そうな黒革のソファーの前に連れてきた暁さん。
それに逆らわずに座れば、やっと私の腕を離して、その対面にある一人掛けのソファーに腰掛けた。
「……………………」
「……………………」
扉が閉まると、さっきまでの喧騒がうそのように静かで。
あの大音量で流れていた音楽は、会話の邪魔にならない程度にまで下がっている。
二人きりになったこの部屋で、何を言われるのだろうと身構える私を、捕獲した獲物をどうやって食べてやろうかと考えるような目で見ていた暁さんは
「ねぇ、あの話、考えてくれた?」
ソファーの背凭れに深く背を預けて、ゆっくりと口を開く。