店内は音楽に合わせて踊っている人達や、カウンターやテーブル席でお酒を飲みながら談笑している人達で賑わっていて。


その内の何人かが暁さんに気がついて、慌てて頭を下げてくる。


それに答えることなくピンクにライトアップされた階段を上った彼女が向かったのは、二階の《VIP》と書かれた扉の前……を通り越して、更に奥に進んだ《VVIP》と書かれた部屋の前だった。


扉の両脇には先ほどと同じような黒服の男が立っていて、重圧感が半端ない。


明らかに他の部屋と違う重厚な扉と警備に、ここだけが特別な部屋なのだと、こういうお店に無知な私でもいやでもわかった。


「どうぞ」


その黒服の男が重い扉を押して中へと促すと、慣れた足取りで入って行く暁さん。


もちろん、腕を掴まれたままの私も、強制的に部屋の中に足を踏み入れたのだった。