『そういう甘い考えが、命取りになるんだよ』
「私の考えが甘いって言いたいの!?」
言われた言葉にムッとして、女が言い返せば
『相手の技量も知らないくせに、甘すぎるよねぇ』
ふぅ、と溜め息と共に吐き出された男の声には、嘲りが込められていた。
「……っ……あの女の技量なんて、高々知れてるわ!!」
ぎりりと歯を噛み締めれば、女の口内にはベリーの酸味が広がる。
『だから、その考えが甘いんだって。あんた、マリア・ウィンザーの何を知ってるのさ。結城魁の婚約者だってこと以外は、俺から得た情報だけしか知らないんだろ? あの女がただの貴族のお嬢様だなんて思ってるんなら、救いようのない大バカ野郎だね』
そこまで言われて気がついたのは
「…………あの女の情報は、あれで全部じゃなかったってこと?」
まだ自分の知らない情報があるということ。


