「そんな、こと……」
否定するように、力なく首を横に振ったけれど
「ない、って言うの? 笑わせないでよ! だったら何で、のこのこと一人で下校なんてしてるわけ? 同じクラスに探し回ってる奴がいるっていうのに。そんなの、絶対にバレないって自信があったからでしょ!? 馬鹿にしてっ!」
私の返事に苛立った彼女は、カツラを床に叩きつけて一歩間合いを詰めてくる。
それに合わせて後ろに下がろうとしたけれど、暁さんと距離を取るのは無理だった。
運悪く、後は壁になっていたから。
「……………………」
この体勢はまずい、かも……
逃げ場を失った私は、もう一歩近付いてきた彼女から逃れるようにぴたりと壁に背中を押し付ける。
「でも……」
そんな私を逃がすまいと
「やっと、捕まえた」
右の手首を強く掴んできた暁さんは
「今度こそ、一緒に来てもらうわよ」
「……っ、」
嬉しそうに口の端を吊り上げた。