「…………え?」
何でここで、魁さんの名前が出てくるの?
さっきから忙しなく動いてる鼓動は、彼女の口から飛び出した「結城さん」という言葉にありえないぐらいに跳ね上がる。
だってそれは、私と魁さんの関係を知らなければ絶対に出てこないはずの名前で。
「なぁに、その顔。もしかして、私が気づいていないとでも思っていたの?」
ドキンドキンと耳に直接響く心臓の音が、早くここから逃げろと警鐘を鳴らす。
「約束したあの日、あなたが来るのをずっと待っていたのに」
私、周防マリアが暁さんと約束したことなんて一度もない。
彼女と約束をしたことがあるとすれば、それは……
「約束は守らなきゃいけないって、教わらなかった? マリア・ウィンザーさん」
「……っ……!」
ホテルのレストルームで言葉を交わした、あの時だけだ。


