◇ 玄関を出て、父の経営する料亭と自宅との間にある狭い通路を抜けたところにある小さな裏門を開けると、大きな漆黒のバイクの前にあの男が立っていた。 「悪ぃ、待たせたな」 前を歩く蓮が軽い口調で声を掛ければ、スマホの画面に向けていた視線を上げて、こっちを見る。 「───あぁ」 「……………………」 ───なんだ…… 電話の口調から、どれだけ怖い形相で待っているのかと思っていたけど。 相変わらず嫌味なくらいに整った顔からは、なんの感情も読み取ることはできなかった。