剣道の県大会の帰り道。空はオレンジ色に染まっていた。

「あーやっぱり小梅はすごいねぇ」

友達の美波が私に話しかける。

「何が?」

私は、立花小梅。5歳のころから竹刀を振ってきて、早12年。

「何がってそのちっさい体でよく個人優勝できるよなって思ってさ」

少しバカにしたような口調の美咲がニヤニヤと言う。

「な!!ちっさいは余計だし!ちっさくても技術があればいーの!」

「そんなにムキになんなくていーじゃん。一応誉めてるんだし。」

いちいち一言よけいだってば。


美咲とは幼なじみで一緒に剣道をしてきた仲だ。一番仲がよくて…あれだ。
親友ってやつ。

「あ…」

「小梅?どうしたん?」

そういえばこっちの帰り道だとあの川のほとりのとこにいけるよね。

「美咲!あたしあの梅の木のとこ行ってくるね!」

「また?この道通るたびに行くよね。そんなに好きなの?」

その美咲の問いに小梅は目を輝かせて答える。

「梅ほど可愛い花はないの!しかもあのほとりの梅の木格別なんだから!」

じゃあね、と美咲に手を振り、駆け足で梅の木を目指す。
その後ろ姿を見ていた美咲はふと考えた。

(そういえばあの木ってなんか噂あったような気がするんだけどなぁ…)

「まっいっか。」


その噂がのちに小梅を波乱の運命へと迷わせることを知らない美咲は呑気に鼻歌を歌いながら家へと帰った。