けれど西川はそれをあえて言わず、玄関へと向かおうとする。
「おい、待て。まだ終わってない」
「は?」
しかし少女は、西川の腕を掴んでそれを止めた。
西川は不思議になる。
着替えたはずなのに、何故行かないのか。
西川には、理解が出来なかったのだ。
少女は止まった西川を見ると、西川の腕を離す。
「まだ着替えていない」
「いや、着替えは終わったんじゃ……」
「……待っておけ」
少女は、近くにあった自分の鞄から、黒い何かを取り出した。
「え……」
それを見た西川は、驚きのあまり言葉を失った。
少女は、他にも色々なものを出していく。
その全て、西川には見覚えがあった。
黒い何かとは…黒いぼさぼさのウィッグ。
メイクポーチ。
銀縁眼鏡。
「なんだ、これ……」
西川は、ただただ驚く。


