サイコさんは、憂鬱なのです。






「あれ?どこにいるんだ?」


 西川は、首を傾げた。



 リビングにも、キッチンにも、洗面所にも、少女はいなかったのだ。

 どんなに探しても、少女はいない。


 ふと、西川の脳裏に、信じられないことが浮かんだ。



「も、ももしや……幽霊だったりして」

 西川の顔から、サーッと血の気が引いて行く。
 そんなことはないと思いながらも、そんな考えがどうしても、西川の頭から離れなかった。



「おい、どうした」


「ひぃっ!」



 背後から少し高めの声が聞こえた。

 ただの〝声〟なのだが、西川を恐怖に落とすには充分だった。


 西川は驚いて、後ろを勢いよく向いた。



「あっ……」


 けれどすぐ、西川は間抜けな声を出して、胸を撫で下ろした。

 何故なら、目の前に少女が立っていたからだ。


 少女は、さっきと何ら変わらぬ様子で、西川を見ていた。



「ど、どこに行ってたんですか……?」


 西川は、まだドキドキと鳴る心臓に手を当てながら、少女に問うた。



「え?ああ、トイレ」


「あ、そうですか……」


 そういえば、トイレは見てなかったな。