「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってくださいっ‼」 「何ですか?」 「お、お母さんじゃなくてっ‼百目鬼君ですよっ」 「僕? どうかしたの?」 「どうもこうもないですよ‼私たち、デートに行く約束なんて、してないですよね!?」 そうだ。すっかり流されかけていたけれど、そもそも私と百目鬼君は、デートの約束なんてしていない。 それなのに、百目鬼君は、一瞬だけ目を丸くしたあと、おかしそうに笑い始めた。