「ど、どうしたんですか……。今日は祝日ですよ? 私、何も用事なんて……」 「あるよ」 おそらく自分の存在に気づいていなかった、橘の肩が面白いくらいに跳ねた。 普段は微動だにしない顔は瞬時に強ばる。 一瞬、橘は視線をさ迷わせーーーーー、目が、合う。 「おはよう、橘。今日は僕とデートの日……だよね?」 橘母の言いつけ通り、部屋には入らないようにして……、ひらひらっと手を振ってみせた。 無意識だろうが、彼女の唇がどうめきくん、と動くのを目敏く見つけて、僕の笑みは深くなる。