ネジの外れた強引王子

「茉梨」

再び前に向き直ると、こんこん、とドアをノックする。

……返事は、ない。


「……すみません。寝起きが悪いんです、あの子」

こんこん、こんこんこん、こんこんこんこんこんこん……


「茉梨、茉梨!」

だんだんと早くなるノックの音。
それに呼応して、呼び声も早くなっていく。



「茉梨!茉梨ったら‼」

これまで、あまり抑揚のなかった声に、変化があった。
確かにまあ、囁くような、動きのないその声では、人を起こすのには向いてはいないだろうけれど。

ーーーだけど。


母によく似た娘だ。もしかしたら、彼女も、こんな風に、か弱いようだけれど真っ直ぐなあの声が、乱されるときがあるのかもしれない。

そう思うと、一秒でも早く、会いたくなってくる。