「王子様」

「天才」


そんな称賛の言葉は、自分のためにあった。


僕の前に立つものは皆、称賛の言葉を吐く。
それが本心であろうと、そうでなかろうと。


実際、なんだってできたんだ。
勉強だろうが、運動だろうが、とにかくなんでも。



そのうえ、家は世界的に有名な大財閥。

家はーーー、そんなに好きじゃなかったが、利用できるなら利用しようと思って、最大限まで利用してやった。


つまらない。何もかもが。全てが。


何もないんだ。僕には。

これ以上に、望むものなど。


……これ以上満たされたくはない。





それなのに。


もう一度、お前に出逢ってしまったから。


僕は、また足りなくなった。

……満たされたいと、思ってしまった。