ダンッ。

「ひぇっ!?」
「起きてるんじゃないですか!!中に入りますよ‼」

一際大きくドアを叩かれて、思わずびくり、と体を揺らす。
一気に眠りから覚めて、私は体を起こした。

ガチャッ、という音とともに、部屋に入ってきたのは案の定お母さんで。
その顔は、にこにこと笑ってはいるけれど、目が笑ってない……………。

「ど、どうしたんですか……。今日は祝日ですよ? 私、何も用事なんて……」

「あるよ」

ぴくっと体が固まる。私の部屋に響く、テノールの声。

ちょっと待ってください……。これもまた、私が寝ぼけてるんじゃなかったら………。

「おはよう、橘。今日は僕とデートの日……だよね?」

ひょこっと母の背後から現れたのは……。